効率よく成長したいなら必須の知識!特異性の原則で練習メニューを決めよう

トレーニングの原則について別の記事でも登場していますが、その中でも「特異性の原則」について詳しく説明します。

ナマケモノ
ナマケモノ

練習はとにかく頑張れば効果がでるものではありません。

自分が何の能力を向上させたいのかを考え、それに合った特異的なトレーニングを計画・実施しましょう。

この記事を読むと
  1. 特異性の原則について知ることができる
  2. 根拠をもってトレーニング内容を決めることができる
  3. 最小限の練習で成長できるようになる

特異性の原則とは

トレーニングを行うと、それと同じ運動タイプや運動課題で効果がみられます。
これを「特異性の原則」といいます。

言い換えると、向上させたい能力があれば、それと同類のトレーニングをすると効果的ということです。

例えば、バーベルやダンベル、マシンなどを使って高負荷の筋トレをしてもフルマラソンは速くならないですよね。

ここまで極端な例を出せば「そんなの当たり前でしょう!」と思うかもしれませんが、次の例はどうですか?

”フルマラソンサブ●●を達成するために、ジョギングだけをコツコツ続けている。”

これは、意外とやっている人がいるのではないでしょうか。
設定するジョギング・ランニングのペースが大事なのですが、今、自分が長く走れるペースでなんとなくやっていませんか?
これでは、なかなか目標に近づきません。

これから、特異性の原則に関する研究をいくつか紹介します。
最終的にはランニングやトライアスロンにどう生かすのかを説明します。

特異性の原則に関する研究

”垂直跳び”と特異性の原則

まずは垂直跳びを題材にした研究の紹介です。

垂直跳びでどれだけの高さを跳べるかを計測してから、トレーニングを行いました。
トレーニングは3パターンです。

Aグループ:垂直跳びを繰り返す
Bグループ:筋の長さを変えずに行う筋トレを行う(等尺性トレーニング、アイソメトリック)
Cグループ:バーベルなどのウェイトトレーニングを行う

トレーニングを続け、垂直跳びの高さを再計測しました。

<金子 公宥 他(1993)『パワーアップの原則再考』Jap J Sports Sci 12の研究内容を要約>

どのグループが一番垂直跳びの高さが増加したと思いますか?

答えは・・・

垂直跳びの跳躍高に及ぼす3種のトレーニング効果

引用:勝田 茂(2015)『入門運動生理学 第4版』杏林書院
原典:金子 公宥 他(1993)『パワーアップの原則再考』Jap J Sports Sci 12:160-164

Aグループです。

垂直と跳びを行うための筋群を強化するよりも、動作そのものを繰り返しトレーニングしたほうが効果的だったということです。

ある特定の運動動作の成績を向上させたい場合は、その動作行うための筋群を強化するよりも、動作そのものを繰り返したほうが効果的ということです。

走るのを速くしたければ、筋トレよりも走ったほうが効果的ということになります。

ちなみに、同じ筋トレでもisomet(等尺性トレーニング)とウェイトトレーニングで差が生じているのはなぜでしょう?

垂直跳びをする時の筋収縮は、筋の長さが変わりながら行われます。
ウェイトトレーニングは筋の長さの変化を伴いますので、等尺性トレーニングよりも垂直跳び時の筋収縮の様式に近い(特異性が近い)ので効果が高かったと考えられます。
ここにも特異性の原則の重要性が現れていますね。

「特異性の原則」と「過負荷の原則」の関係

では、筋トレはせずに走っているだけのほうが良いのでしょうか?

その疑問に対する答えが、同じ研究で報告されています。

垂直跳びでどれだけの高さを跳べるかを計測してから、トレーニングを行いました。
トレーニングは3パターンです。

Aグループ:垂直跳びを繰り返す
Bグループ:垂直跳びを繰り返す+等尺性トレーニング(アイソメトリック)
Cグループ:垂直跳びを繰り返す+ウェイトトレーニング

トレーニングを続け、垂直跳びの高さを再計測しました。

<金子 公宥 他(1993)『パワーアップの原則再考』Jap J Sports Sci 12の研究内容を要約>

どのグループが一番垂直跳びの高さが増加したと思いますか?

答えは・・・

垂直跳びの跳躍高に及ぼす複合トレーニング効果

引用:勝田 茂(2015)『入門運動生理学 第4版』杏林書院
原典:金子 公宥 他(1993)『パワーアップの原則再考』Jap J Sports Sci 12:160-164

Cグループです。

垂直跳びとウェイトトレーニングを合わせて行ったときが最も効果が高かったということです。
ちなみに、ウェイトトレーニングは筋の長さの変化が生じるという点で垂直跳びに特異性が近いので、isomet(等尺性)よりも高い効果が出ています。

垂直跳びは「特異性の原則」に一致、ウェイトトレーニングは「過負荷の原則」に一致します。

過負荷の原則

日常生活以上の負荷を与えなければ、トレーニングの効果は現れません。
また、トレーニングをしていても、いつもと同じ負荷ではその負荷に慣れてしまうため効果が表れません。
自分の成長に合わせて、トレーニングの負荷は上げていく必要があります。

速く走ることができるようになりたいのであれば、いつもどおり自分が走れるペースで走るだけではなく、いつもより速いペース(過負荷)で走る練習やウェイトトレーニング(過負荷)を併せて行ったほうが効果が高いということが言えます。

なんとなくジョギングだけをコツコツ続けているとなかなか目標に近づかないと、冒頭でお話した理由がこれです。

現在の自分と目標を見比べて、必要な能力があればその能力を向上させるための特異的なトレーニングを追加することが必要です。

過負荷の原則と特異性の原則をランニングに適応したらどうなるかは、次の記事をご覧ください。

”スイム・バイク・ラン”と特異性の原則

次に、スイム・バイク・ランの3種目に特異性の原則がどう影響するかです。

Magelらによると、水泳による10週間の持久力トレーニングの効果を調べた結果、水泳による最大酸素摂取量は11.2%上昇したが、走行による最大酸素摂取量は1.5%しか上昇しなかったと報告している。

引用:勝田 茂(2015)『入門運動生理学 第4版』杏林書院
原典:Magel JR 他(1975)『Specificity of swim training on maximal oxygen uptake』J Apple Physiol 38:151-155

Pierceらの研究で、走行による持久力トレーニングの効果を調べた結果では、走行による乳酸性作業閾値は58%も上昇したが、自転車による乳酸性作業閾値は20%しか上昇せず、またその逆に自転車による持久力トレーニングの効果を調べた結果では、自転車による乳酸性作業閾値を39%上昇させたにもかかわらず、走行による乳酸性作業閾値は不変であったと報告している。

引用:勝田 茂(2015)『入門運動生理学 第4版』杏林書院
原典:Pierce EFA 他(1990)『Effects of training specificity on the lactate threshold and O2 peak』Int J Sports Med 11:267-272

つまり、ある種目の練習は別の種目における全身持久力の向上につながりにくいということです。

トライアスロンで苦手な種目の成績を上げたければ、その種目のトレーニングをするべきということです。得意な種目・好きな種目ばかり練習して持久力を鍛えても、苦手な種目は速くならないのです。

まとめ

以下の3つを意識してトレーニングメニューを作成・実行して、効率よく成長していきましょう!

トレーニングを行うと、それと同じ運動タイプや運動課題で効果がみられる。

ある特定の運動動作成績を向上させたい場合は、その動作行うための筋群を強化するよりも、動作そのものを繰り返したほうが効果的。

速く走りたければ、ウェイトトレーニングよりは走るトレーニングをしたほうが効果的。

特異性の原則に一致したトレーニングだけよりも、過負荷の原則に一致したトレーニングも併用したほうが効果的。

速く走りたければ、いつもどおり自分が走れるペースで走るだけではなく、いつもより速いペース(過負荷)で走る練習やウェイトトレーニング(過負荷)を併せて行ったほうが効果が高い。

トライアスロンにおいて、スイム・バイク・ランの練習はその種目の全身持久力向上には効果的だが、他の種目には効果が出にくい。

能力を向上したい種目があれば、それぞれの種目を練習する必要がある。

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