ランニングをこれから始めようと考えている方の大きな目標として、「フルマラソン完走」というものがきっと頭に浮かぶと思います。ですが、ランニング未経験の方がいきなり完走できるほどフルマラソンは甘くありません。まずは「マラソン大会で10kmを完走」することを私はおすすめします。
「マラソン大会で10kmを完走」というのは、何も運動していない人には難しいものです。みなさんの周りに、「マラソン大会で10kmを完走したことがある」という人が何人いるでしょうか。そんなにいないと思います。
ランニングをしていない人からすると、10km走れるという人は十分にスゴイ人です。
そのような「マラソン大会で10km完走」を、ほとんど走ったことのないランニング初心者が無理なく3か月で走れるようになるロードマップをお伝えします。
前提条件と目標設定
このロードマップを作成するにあたり、前提条件を確認し、目標を設定します。
3か月もかけずに達成できる人や、3か月もかからない練習法もあると思いますが、急がず焦らず無理せずに、再現性高く達成できる内容を意識しました。
ナマケモノらしく、週2回の練習で計画します。
10kmの大会の制限時間は80~90分で設定されていることが多いので、80分を目標としました。
大会を探して申し込む
まずは目標となる大会を見つけましょう。大会の期日が決まることで、練習に取り組むモチベーションは大きく上がります。大会が決まらないと、それに向けてのトレーニングメニューも立てられません。
マラソンの大会を探すなら「ランネット」です。日本最大のランニングポータルで、開催日、大会名、開催地、距離などからマラソン大会を検索できます。
初めての大会は気候の良い春か秋をおすすめします。暑がりで汗かきだという人は春や秋でも暑く感じますので、冬でも良いでしょう。
練習の準備
練習の準備ですが、大した道具は必要ありません。
- ランニングシューズ
- シャツ、ズボン、靴下
- ランニングウォッチ(GPS機能付きが超おすすめ)
- ランニングポーチ
これさえあれば練習は可能です。
ランニングシューズ
初心者の方が10kmを80分で完走するために高価な靴は必要ありません。クッション性が高い、5,000~10,000円前後のエントリーモデルのランニングシューズで十分です。
カーボンプレートが入った厚底シューズを履けば速く走れるように思えるかもしれませんが、高い反発力に耐えられる体が備わっていないと使いこなせずに、むしろ故障する可能性も上がります。
ランニングシャツ、ズボン、ソックス
シャツとズボンは汗を素早く乾燥させることのできる、ポリエステルでできたものがおすすめです。綿100%のものは汗を吸って重くなり不快感が大きくなります。
私は、マラソン大会の参加賞で配布されたTシャツを着ています。最近はポリエステル100%が主流です。
ソックスは、ランニング専用のものもありますが、必須ではありません。私は、練習時は普段履きのソックスでそのまま走っています。
いずれも高価なものが必須ではありませんが、ウェアのデザインや機能は着たときの自分の満足感やモチベーションの維持にもつながりますので、自分の納得のいくものを選ぶと良いでしょう。
ウェアにかかるコストが気になってランニングが始められないのであれば、安価なもので全く問題ありませんので、とりあえず走り始めましょう!良いものを買いたくなったら買えばよいです。
ランニングウォッチ
GPS機能のついた時計(以下GPSウォッチ)をお勧めします。普通のストップウォッチ機能のついた時計でも練習できないことはありませんが、GPSウォッチが便利すぎます。
GPSウォッチのメリットについて挙げます。
- どこを走っても距離が測定できるので、ランニングコースが無限に広がる
- ペースをリアルタイムで知ることができる
- タイムやペース以外にも様々なデータを取得できる
- 管理がスマホでも行えるため、練習の振り返りに便利
この記事で具体的な練習メニューを提案していますが、歩いたり走ったりするペースを設定して提案していますので、GPSウォッチがあったほうが絶対に実施しやすいです。
GPSウォッチの素晴らしさについて記載した記事はこちらです。
ランニングポーチ
10kmを走るための練習は長時間になりますので、練習中も給水が必要です。自動販売機でジュースを買って一気に飲み干すわけにもいきませんので、水分を持ち運べるランニングポーチを準備しておくことをおすすめします。
ランニングの練習の進め方
まずは10km80分について知る
具体的な練習メニューを立てる前に、目標とする10km80分がどのようなものなのか把握しましょう。
10km80分=1km8分=時速7.5km(早歩きより少し速い)
※歩行:およそ時速4.8km 早歩き:およそ時速6~7km
このことから10kmを80分で完走するためには、早歩きよりも少し速いペースで走り続けるということが分かります。それほどスピードは必要ないということです。
まずは歩行+早歩き
ランニングを始めると決心したことですぐにでも走りたくなると思いますが、焦らず、ゆっくり、じっくりと脚を慣らしていくために、まずは歩きましょう。
最初の1か月で、10kmの練習に耐えられる脚をつくります。ケガをすることが一番の遠回りです。
せっかく走ろうと決意したのに「歩きましょう」と言われると冷めた気持ちになるかもしれませんが、ジョギングはウォーキングの数倍の体重が脚にかかります。走り慣れていない方がいきなりジョギングを始めると高確率で脚のどこかを傷めます。初回は問題なく走れて爽快な気分かもしれませんが、すぐに不調が現れるでしょう。
具体的にどのように歩くのか提案します。
1カ月目 | 内容 | 時間 | 距離 |
1週目 | 歩行(40分) | 40分 | 3.2km |
2週目 | 歩行(10分)→早歩き(10分)→歩行(10分)→早歩き(10分) | 40分 | 3.6~4.0km |
3週目 | 歩行(5分)→早歩き(20分)→歩行(5分)→早歩き(20分) | 50分 | 4.8~5.5km |
4週目 | 歩行(5分)→早歩き(30分)→歩行(5分)→早歩き(30分) | 70分 | 6.8~7.8km |
まずは普通の速度(時速4.8km)で40分歩いてみましょう。移動距離は3.2kmです。
40分歩いて関節も筋肉も心肺も問題なければ、次は「早歩き(10分)」を加えます。早歩きはおよそ時速6~7kmです。「まだ走らないのか?」と思うかもしれませんが、騙されたと思って一度やってみてください。早歩きでの10分間は想像以上に長くきついです。
次の段階として、歩行の時間を短縮し、早歩きの時間を延ばし、トータルでの運動時間も延ばします。70分も歩くのは長いと思うかもしれませんが、10kmを完走するためには70~80分を動き続けなければなりません。慣れましょう。
ジョギングを少しずつ増やす
連続30分の早歩きができる頃頃にはそろそろジョギングをしてもいい脚になっているはずです。そこで、ジョギング(時速8km=1km7分30秒)を少しずつ加えます。
10km80分=時速7.5km=1km8分より少し速く設定しているのは、目標よりも少し速いペースに体を慣れさせるためです。
2カ月目 | 内容 | 時間 | 距離 |
5週目 | 歩行(10分)→jog(10分)→歩行(10分)→jog(10分) | 40分 | 4.3km |
6周目 | 歩行(5分)→jog(15分)→歩行(5分)→jog(15分) | 40分 | 4.8km |
7週目 | 歩行(5分)→jog(20分)→歩行(5分)→jog(20分) | 50分 | 6.1km |
8週目 | 歩行(5分)→jog(25分)→歩行(5分)→jog(25分) | 60分 | 7.5km |
3カ月目 | 内容 | 時間 | 距離 |
9週目 | 歩行(5分)→jog(30分)→歩行(5分)→jog(30分) | 70分 | 8.8km |
10週目 | 歩行(5分)→jog(35分)→歩行(5分)→jog(35分) | 80分 | 10.1km |
11週目 | jog10km(どんなに遅くてもいいので) | –分 | 10km |
12週目 | jog75分 | 75分 | 10km |
歩行の時と同様で、関節も筋肉も心肺も問題なければジョギングの時間を増やしていきます。最終的には歩行をなくして、ジョギングだけになります。
最後のジョギング75分を練習でやってしまうと、大会本番までに10km80分を完走してしまうことになります。これでは本番の楽しみがなくなってしまう!という人は、10kmを連続で走る練習は本番までとっておきましょう。
このメニューは、練習時間を確保できない人を想定して、週に2回の練習をする場合をイメージしています。もう少し練習をする余裕があれば、練習日と練習日の間に軽い歩行とストレッチを行うと疲労回復を促すことができます。
9~12週目のメニューを週2回実施した場合の月間走行+歩行距離は約78kmです。
ウォーキングから始めたときは物足らなさを感じるかもしれませんが、3か月以内には10kmという距離に到達します。
フォームは「背筋を伸ばす」を意識する
フォームで意識するのは「背筋を伸ばす」です。頭のてっぺんに糸がついていて、空に向かってに引っ張られているようなイメージです。「背筋を伸ばす」以外はあまり細かいことは考えなくても大丈夫です。
歩幅を狭くして回転数を上げる「ピッチ走法」か、歩幅を拡げて回転数は少なめの「ストライド走法」のどちらが良いかというと、練習を始めたばかりの人は基本的に「ピッチ走法」が良いと思います。ストライド走法は、もともとスピードの出せる人がとりやすい走法です。ストライド走法には筋力が必要で、地面からの衝撃も大きいので、練習を始めたばかりの人にはおすすめしません。
故障が最大の遠回りなので、無理はしない
順調に早歩きやジョギングの時間を増やせれば3か月で目標を達成できる計画ですが、人によってはオーバーワークで故障する可能性もありえます。
少しでも異常を感じたら「練習量を減らす」「練習量を増やさない(維持に留める)」「練習増加量を抑える」などして、負担をかけすぎないようにしましょう。
無理をして故障をしてしまうと、大幅に計画が遅れます。
レース直前1週間は疲労を残さない程度の練習をする
上記の練習で、10kmを80分以内に完走する能力は備わっているはずです。直前の1週間は疲労を残さないために軽めの練習にします。
直前はレースペースの1km7分30秒で3~5km走る程度に抑えておきましょう。完全休養にするのではなく、軽く走るくらいのほうが疲労はとれますし、走る感覚も失われません。
レース本番の走り方
スタート直後は焦らずのんびり
初めてのレース本番は緊張して、周囲の大勢の参加者の中でペースを乱してしまう可能性が高いです。スタート時に集団の中で前に進めず焦ってしまい、選手の間を縫うように前に前に走ろうとしてしまうかもしれません。これはほかの選手と接触してしまい転倒する危険性も高い行為ですのでやめておきましょう。ジグザグ走るのも、脚に無駄に負担がかかります。
練習の段階で1km7分30秒ペースで練習してきているので、75分でゴールできる能力になっています。5分の余裕をもったペースで練習をしているので、焦る必要はありません。極端な話、最初の1kmに12分30秒かかったとしても、80分でゴールできるので安心してください。
最初の1kmはウォーミングアップくらいの気持ちでのんびり走りましょう。
1kmの通過タイムを確認してから目標ペースに戻す
密集状態から解放されても、最初の1kmを7分30秒にするためにペースアップしてはいけません。スタートで出遅れているのに最初の1kmを予定通り7分30秒で走るということは、100%オーバーペースになっています。
1kmの通過タイムは気にしてはいけません。あくまでも確認するだけにとどめて、次の1km(1km地点から2km地点の時間)が7分30秒前後になるように走りましょう。
ペースのアップダウンをできるだけ起こさずに、一定のペースでコツコツ走ることが大事です。このときもGPSウォッチが活躍します。とはいえ、プラスマイナス10秒くらいの変化は気にしなくて大丈夫です。
あまり神経質にはならずに、待ちに待ったレースの空気を楽しみましょう。
給水は確実に行う
およそ80分の長時間のレースですので、発汗により水分もミネラルもたくさん失います。給水はしたほうがいいです。
5分の余裕をもったペースで練習してきていますので、走りながらドリンクを取ったり飲んだりする必要はありません。歩きながら落ちついてドリンクを取って飲みましょう。
飲む量は、汗をかく量にもよりますので人それぞれです。普段の練習から水分を補給するようにして、どのくらい飲むのが自分に合っているのかを知っておくと良いです。
まとめ
ランニング初心者がマラソン大会で10kmを80分以内に完走するための手順をお伝えしました。
必要な道具はそれほどありません。
- ランニングシューズ
- シャツ、ズボン、靴下
- ランニングウォッチ(GPS機能付きが超おすすめ)
- ランニングポーチ
練習計画を立てる前に、10km80分がどのようなものであるか確認しましょう。
10km80分=1km8分=時速7.5km(あや歩きより少し速い)
※歩行:およそ時速4.8km 早歩き:およそ時速6~7km
練習は、ウォーキングから始めて、早歩き、ジョギングの時間を段階的に増やしていきましょう。ケガをすることが最大の遠回りですので、少しでも異常を感じたら、負荷を見直しましょう。
レース本番は周囲のランナーに流されず、落ち着いて走りましょう。
多くの方が大会で10kmを完走できる達成感を味わえることを願います!
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