スイム3.8km、バイク180km、ラン42.2kmを続けて行うアイアンマンレース。
こんな超人的なレースを完走するためにどのような練習がどのくらい必要か、皆さんはご存じでしょうか?
検索すると様々な経験談が見つかると思います。
私は「週2回(月9回)以下のトレーニング」という、練習頻度を最小にするというコンセプトでアイアンマンレースに挑戦し、16ヶ月で達成しました。
この記事では、少ない練習頻度でどのような練習をしてアイアンマンレースをサブ15で完走したのか、様々な情報を公開していきます。
最も効果のある練習メニューを計画どおりに忠実に実行・・・とは程遠い内容です。
練習内容はあまり専門的になりすぎずシンプルですし、計画が崩れた部分も多々ありますので、「これくらいの練習内容でも完走できるんだ!」と感じてもらえるはずです。
仕事や家庭が忙しくて練習日をそれほど確保できない・・・という悩みを抱えている方でも、この記事を読めばアイアンマンレースへの一歩を踏み出す勇気が湧いてくるはずです。
”ANYTHING IS POSSIBLE”
アイアンマンレースのテーマです。
不可能はありません。
鉄人の称号を得るためのヒントが見つかりますので、ぜひ最後まで読んでみてください。
トレーニング開始時の私のスペック
トレーニング内容と結果を参考にする前に、その人の運動歴の確認は必須です。
過去に運動の経験があれば、その種目はとても有利になります。
まずはトレーニング開始時の私の運動歴・スペックを公開します。
小学6年生のときの50m40秒というのは、水泳を習っていない人からすると速いですが、習っている人からすると普通の記録です。
35歳時点で既に昔のスピードは失われ、40歳ではさらに遅くなっていました。
21歳の時の240kmは遊びで、1回したきりです。
ランは私の専門種目です。
3種目の中で唯一アドバンテージを感じられる種目です。
アイアンマン完走直前の私のスペック
2024年9月15日にアイアンマンジャパンみなみ北海道を完走する直前の練習時の能力です。
スイムは最初の種目なので、練習時のタイムから本番を想像しやすいです。
8月11日のOWSで3.8kmを1時間45分で泳ぎきれたことで、本番も制限時間以内に泳げる自信がつきました。
バイクはスイム3.8km後の疲労状態からスタートなので、練習時より遅くなる可能性があります。
しかも、本番は次にラン42kmも待っているので、全力を出し切るわけにもいきません。
ただし、エイドステーションで水分や補給食を提供してもらえるので練習の時のような水分をボトルに詰め替えたりする時間のロスはありませんし、信号も一切ありあません。
時間の短縮を見込める要素もあります。
この練習状況ではアイアンマンレース本番にどうなるか予測ができず、不安を残すことになりました。
ランはスイム3.8km、バイク180kmの後の種目なので、練習時のタイムで本番を想像できません。
ですが、5時間で走れていれば、途中から歩いたとしてもなんとかなりそうな気がしました。
アイアンマン完走時のタイム
スイムの制限時間は2時間20分です。
私は制限時間の30分前にゴールしました。
バイクの制限時間はスイム開始後10時間30分です。
私は制限時間の45分前にゴールしました。
バイクはパンクなどの急なトラブルが生じる可能性もあるので、45分前というのは余裕があるとはいえず、割とギリギリと考えています。
ランの制限時間はスイム開始後17時間です。
私は制限時間の2時間30分前にゴールしました。
ランは得意種目だったので、かなり余裕をもってゴールできました。
アイアンマンレース本番までの流れ
<2023年5~11月>
体力回復のため、フルマラソンをサブ4で完走することを目指した時期。
結果は4時間28分03秒。
<2023年11月~2025年9月>
アイアンマン完走に向けて、3種目の練習を実施。
各月の練習量
練習した距離のデータとグラフです。
3種目のグラフを距離で並べると、距離が短いスイムが見えにくいですね。
そこで、アイアンマンの距離を基準として、その何倍の距離を練習したかという数値にします。
2023年11月まではランしかしていない時期なので、トータルではランの練習量が一番多いです。
次に多いのがスイムです。
特に大会前の7月・8月に危機感をもって追い込みました。
一番少ないのがバイク。
ロングライドは少なめで、短い距離のインターバルトレーニングをすることが多かったので、練習量自体は少なくなっています。
なお、2023年12月以降、3種目を練習するようになってからのランの合計練習量は17.32です。
これはスイムよりも少なく、バイクよりは多い数値です。
これをグラフにします。
全練習データ(距離)
全ての練習日の距離のデータです。
見てみたい方はダウンロードしてみてください。
練習の内容までは記載しておりません。
細かい内容を見たい方は、練習日誌をご参照ください。
3種目の練習内容とその振り返り
私が実施した練習について紹介と振り返りをします。
スイム
技術練習(YouTube動画で学習した技術を実践)
YouTubeのトモキンスイミング教室というチャンネルの動画で、楽に早く泳ぐ方法を勉強して、それを意識しながら泳ぐ練習をしていました。
頭では動きを理解できて、意識すれば体もそのように動かせているつもりですが、タイムを見る限り劇的な改善は見られませんでした。
トモキンスイミング教室は素晴らしいのですが、月に2回しかプールに行っていない私の練習頻度がダメでした。
フォームが身に付く感じはなく、常に意識しないとダメでした。
距離泳
本番が3.8kmなので、長距離を泳ぐ経験は必要です。
プールで1日3000m、海で1日3.8km1時間45分03秒(2分45秒/km)が私の最長記録です。
ただ、長距離ばかりダラダラ何度も泳いでも泳力は向上しませんでした。
距離泳は4回に1回程度で良かったかなと思います。
サークル練習
水泳版のインターバルトレーニングです。
最初は25m×20本1分サークル、50m×10本2分サークル、100m×5本4分サークルで実施していましたが、後述するパーソナルレッスンにて、自分の設定が甘いことを知りました。
レッスンでは100m×10本3分サークルをしましたが、その後は自分で100m×10本2分30秒サークルを2セットまで行えるようになりました。
ドリル
スカーリング、伏し浮き、蹴伸び、サイドキックなどをトモキンスイミング教室で見て実践しましたが、やり方が正しいのか分からず継続して練習しませんでした。
パーソナルレッスンなどでフィードバックをしてくれる人がいてくれないと難しいです。
パーソナルレッスン
私のスイムが遅すぎるので、泳ぎ方に致命的な部分があるに違いないと思い、1時間×2回のみ受講しました。
ですが、一番に指摘されたのは練習頻度の低さでした。
当時、スイムは2週間に1回でした。
少なくとも週1回は練習しないと速くならないと言われました。
技術面に関しても何点か指摘してもらいましたが、体力をつけないとその技術も生かされないと言われました。
100m10本3分サークル(100mは2分20秒以内で)というメニューを処方してもらって、私にはかなりきつかったのです。
普段の自分の追い込みが足りないことを気付くことができました。
オープンウォータースイム(OWS)練習
ウェットスーツを着用して、海で泳ぐ経験は絶対に必要です。
プールできれいなフォームで泳いでいたとしても、波のある海に行くとバラバラになります。
進行方向を確認しながら泳ぐヘッドアップの練習も必要です。
ウェットスーツを着ると体が浮くので、その状態での泳ぎ方にも慣れておく必要があります。
私はウェットスートを持っていなかったので、レンタルした1週間の期間で3回しかOWSをできませんでした。
そこで、3.8kmを1時間45分で連続で泳ぐことに成功し、本番でも3.8kmを泳げる自信がつきました。
ですが、本番は1時間50分かかりました。
もっと海に慣れておくべきでした。
スイムまとめ
- 泳力向上に一番効果を感じたのはサークル練習。
- 長距離を泳ぐ練習はたまにする程度でいい。
- お金が許すならパーソナルレッスンを受けた方がいい。
- OWS練習はできるだけ多くして、海に慣れた方がいい。
- アイアンマン完走を目指すのであれば、2時間以内に「安全に」完泳できる能力があれば十分。速くなくていい。
バイク
ロングライド
本番が180kmなので、最低でも180kmは走る経験をしておきたいと考えていました。
80kmまでしか経験していない3月はそれほど疲れもなく、この調子でペダルを回していればそのうち180kmになると思っていました。
ですが、120kmを経験したときの筋疲労とお尻の痛みがひどく、バイク180kmが簡単ではないと知りました。
そして、高頻度で脚が攣りそう&実際に攣ってしまっていました。
180kmを走り切るには、体力が十分にあるだけでなく、水分・塩分・カロリー摂取が適切にできることも必要です。
可能な限り本番に近い形で水分・塩分・カロリー摂取をできる準備をして、ロングライドの練習を行ったほうがいいです。
ただ、私の感覚ではロングライドばかりしても巡行スピードが上がらない気がしました。
インターバル
180kmを制限時間に完走するには一定以上のスピードで持続させる必要がありますが、スピードが不足している場合はインターバルトレーニングが有効です。
インターバルトレーニングは出力を向上させ、それを持続させる能力を高めることができます。
出力の高いと短時間で筋も心肺を追い込めるので、練習時間が確保できない時にもしやすいです。
これを、緩い上り坂で行っていました。
頑張るというのがどのくらいだったかというと、私の場合10本とも最高スピードを33km/hまで上昇させることを目指していました。
実際にはきつくて30km/h以下になるときもありました。
今思えば、30秒-30秒だけでなく、60秒-60秒など違う設定もすればよかったです。
姿勢やバイクフィッティング
インターネットで姿勢やバイクの調整など調べはしたものの、バイクにまたがった状態を写真に撮ったり誰かに見てもらったりすることができず、いい加減な設定になっていました。
バイクフィッティングのサービスも近所にはありませんでした。
私はそれでも完走できましたが、バイクの設定がいい加減でよいというわけではありません。
たまたま私がうまくいっただけの可能性が高いです。
腰や膝に問題が生じなければ私のようにテキトーな設定で非効率なままでも完走できるかもしれません。
しかし、設定が悪いと速く走れないだけでなく膝や腰を痛める可能性もあります。
自分の体に合うようにすると随分と走りやすくなるらしいので、可能であればバイクフィッティングサービスは受けた方が良いと思います。
その他
バイクと言えば本体の値段がピンからキリまであり、その他のパーツも様々あります。
私はあまりお金をかけずにバイク装備を15万円以内で全て揃えましたので、そちらを解説した記事もご参照ください。
自分の性能を上げておけば、安いバイクと装備でも完走はできます。
バイクまとめ
- ロングライドは水分・塩分・栄養補給も含めて180kmまで経験しておいた方が良い。
- スピードが不足していた私はインターバル走も行っていた。
- バイクフィッティングはいい加減だったが、問題が生じなければテキトーな設定でも完走の可能性はある。
- 自分の性能を上げておけば、安いバイクと装備でも完走できる。
ラン
距離走
私のランの練習はほとんどが距離走でした。
アイアンマンジャパンみなみ北海道のランの制限時間は、スイム開始後から17時間後です。
つまり、ラン単独ではおよそ6時間30分です。
フルマラソンを6時間30分で完走するペースは9分14秒/kmです。
元サブスリーランナー&専門が800mだった私には楽勝なペースなので、スピードを向上させる必要は全くありません。
とにかく距離に耐えられれば良い状況でしたので、少しずつ走行距離を延長する距離走をしていました。
スイム3.8km、バイク180kmの最後に待ち構えている種目ですので、疲労した状態でも完走できる必要があります。
最低でも練習の段階で42kmを走っておきたいと考えていました。
関節を痛めないように少しづつ距離を延長させたつもりですが、それでも距離が20kmを超えるあたりから腸脛靭帯炎に悩まされました。
痛みが酷くならないようにせっかく延長した距離を戻さないといけないことも何度かありました。
練習ではバイク17kmの後のラン40kmまでしか練習で経験できませんでしたが、本番は練習よりも速いペースで完走できました。
本番は明らかに「ランナーズハイ」の状態になっていました。
ブリックラン
トライアスロンのランは、万全の状態でスタートできません。
スイムとバイクの疲労の後でスタートすることになります。
さらに、私のように週に2回しか練習をしない場合、1日に1種目では練習間隔が空きすぎる種目がでてきます。
それらの理由で、「ブリックラン」をよくしていました。
バイクで脚が疲労した状態でランニングを始める練習です。
3種目の練習を始めてからのランの練習回数は49回で、そのうち26回がブリックランでした。
その他
距離走ばかりでは飽きる&距離走をする練習時間がとれない日もあるので、以下のような練習もしていました。
- 1km6分ぺースの距離走の中で1km5分を5本いれる
- 距離走の中で4kmだけ速く走る
- 距離走の最中にウィンドスプリントを5本ほど
- 10kmをできるだけ速く(46分06秒)
- 10km走を1kmインターバル5本にする
- 10km走るうち5kmだけペースを上げる
ランまとめ
- スイム、バイクの後に42.2kmを走りきるために距離走は大事。
- 練習量が多いと故障の原因となり練習に支障が出るため、走行距離の延長は慎重に。焦って急ぐと余計に距離の延長が停滞する。
- ランの練習のうち半分はブリックランをしていた。
- スイム、バイクの後なので、練習のタイムがあまりあてにならない。
まとめ
スイムとバイクについては制限時間まであまり余裕のない状況でしたので、私の練習内容と完走前のスペックは、なんとか完走できるレベルの指標になるのではないかと思います。
週2回(月9回)以下の練習でもアイアンマンレースは完走できました。
ただし、終盤になって3種目とも練習できる距離・時間が長くなってくると、週2回しか練習できないというのは足枷にしか感じませんでした。
スイムの頻度を増やさなくてはならないといって週に1回スイムをすると、バイクやランの頻度をかなり減らすか、1日に複数種目をしなくてはなりません。
しかし、終盤になって長距離を練習できる状態で1日に複数種目の練習をすると、1日の練習時間がものすごく長くなります。
私がいちばん丁度いいのは、『週2〜3回の練習』だろうなと感じました。
一人でも多くの人がアイアンマンレース完走の感動を味わえることを願います。
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